2012年5月16日水曜日


日本の伝統芸術と芸能

         能面と能楽佛像と佛像彫刻
 
                          <その002



* 「野草」の写真には<花咲かおまさ>さんの著作権が付いています。 


 端午の節句は久しぶりの晴天になりました。本日、日曜日も朝から晴れ渡って居ります。大潮の干潮と重なって、恐らく海浜は海遊びの人達で賑わうことでしょう。明日からはゴールデン・ウイークも終わって、大方の人が日常生活に戻っていくことでしょう。また、離島は静かになっていきます。




 

  先回は仏像の素材の事を少々書いてみました。仏像にしても能面にしても現在の基本材料は木材です。手近かな木材を使用していたのが、経済の発達に伴って、遠方から様々な材質の木材を取り寄せ、使用することになりました。
能面の場合は、檜などの木材、或いは紙を使った張子のような使用方法もありましたが、あくまでも主流は木材です。それに引き換え、仏像は木材、石、青銅、鉄、銀、金、水晶などの宝石と、能面に比較すると多種類に渡ります。
仏像の材質でもっとも身近に有りそうなものに石材があります。耐久性が有りますし、硬く簡単に破損したり、磨耗したりしません。しかしながら、削るという作業は並大抵のものではありません。しかしながら、作品は柔らかな線を帯びた形状になります。 路傍のお地蔵さん、観音さま、里の道祖神など。



 
 
  青銅を素材としたブロンズはより滑らかな形状になり、且つ精巧な出来上がりになります。少々、作成方法を説明しましょう。
ブロンズ像は最初、粘土で大方の形を造り上げます。その後、粘土の表面に蜜蝋などを厚く塗り重ね、さらに外側を粘土、土で覆います。 固まったところで、土の表面を温めると、蜜蝋は解けて下に流れ去ります。その後、青銅などを溶かしたもの・・<湯>・・を予め空けておいた穴から注ぎ込みます。
高温の湯が冷えて固まった後に、土を取り除け、像内の粘土も取り除けますと、大方出来上がった像が完成します。 後は細かい部分は削りだしたり、接着すれば完成品が出来上がります。奈良の大仏のような巨大なものでも、作成方法はほぼ同じです。


 
 
 薬師寺の有名なブロンズ像は、何方でも拝観されたと思いますが、素晴らしい高度な技術を持たれた、渡来の仏師の作品ですね。この技術の源流は古代中国か或いは遥か中東以西でしょうか。
水晶や中には宝石、金銀、陶器なども有りますが数は少ないです。古代中国の今も尚残っている名品は石仏。 敦煌はじめ中国の黄河流域には石仏の素晴らしい作品が仏画とともに残っておりますね。日本では木材、石材、粘土、麻布・漆、青銅、鉄、Etc 様々な材質の仏像が現存しますが、木材、石材が圧倒的に多いのも事実。 経済的理由がその中心にあるのでしょう。



                 大日如来古園石仏群

 
 
 石材は産地が偏りますので、九州の臼杵などには石仏の名品が数多くあります。磨崖佛などは奈良県、滋賀県など各所に見られます。もちろん運搬可能な地域には小・中品は有りますが。路傍の地蔵・観音・道祖神はいずこにも見られます。 しかし、当地、加計呂麻島には道標、以外には有りませんが。
塑像は粘土等の材質ですが、奈良の「新薬師寺」に素晴らしい名品がありますね。これも脆いということ、重量があることから、現存数は少ないですが。




名品 紹介コーナー



 ゴールデン・ウイーク最後の日の日曜ですので、先回ご紹介しました鐘紡コレクションの能面集から女面をご紹介します。
* 鐘紡コレクション ・・・戦前三井財閥、三井家が所有しておりました能面、能楽関係の文化財を、戦後GHQの財閥解体の追及から逃れるため、鐘紡が買取と言う形で所有し、これが後に鐘紡コレクションに発展していく。三井家ではその他の能面等は本家で所有したものが、「三井旧蔵能面」として、能面集になっている。 瘋癲老人は長年追い求めて、この能面集も所有しているので、後日、可能な限りお見せ致したい。


A- 小面     天下一 近江 (近江 満昌) ・ 江戸時代初期

        



 この本面は元加賀前田家に有った面で、近江が宝生宗家に入る前に、写しをとったものだそうです。目鼻が中心に寄ったような感じに見えますが。本面の詳細は不明。 前田家であれば相当の名品・・・龍右衛門の面か?・・であった可能性は高い。人中を少しだけ長くすると、どのようになりますでしょうか・・・小面のキチットした型を持つ名品です。


 B- 小面  江戸中期の作。作者不詳。


 近江 満昌作かどうかは不明。 面裏の処理が近江に似ているとの事。上記とは面立ちの違った小面。穏やかな面立ち。 連面と能面集に書かれているので、シテツレに使用した面か?  何かしらホットするような感じを与える。瘋癲老人としては、この方が好みか。見ていて疲れないから。 


 


C-万媚  作者不詳 江戸初期作

 万媚は小面の類型面である。髪の毛書きを見ないと、なかなか判別出来ない。慣れてくれば細かい表情の違いは解るようになるが、なかなか難しい。 材質は桐である。 小面より艶麗さが際立っている。

  

D-節木増  作者不詳 江戸中期作

 能面の写しはこうするものだと言わんばかりの名品。左が「節木増」となり、右が「増女」と能面集には表記されているが、いずれも節木増です。


     節木増                   増女
         


能書きを書く前に、この面の本面をお見せしましょう。 
昭和38年に重要文化財指定の宝生流の名物面。これが本物です。写しととくと比較してみてください。モノクロなのが残念ですが、我慢されたい。


                本面 節木増  


 本面は 増阿弥 久次 60歳以降の作とされている。正に老いてここまでやれるかと思うほどの絶品。 能楽師としてつとに有名であるが・・・
写しの「節木増」も良く表情を正確に捉えており、大変な名手であったろう。2枚同時に見せられて、どれが本面と言われても・・・答えられないと思う。瘋癲老人が神田の本屋街でやっと見つけた「わんや書房」の能面の本。この面を見て胸がドッキンコしたものである。 これに匹敵する面は2面位しかない。

龍右衛門の「雪の小面」、孫次郎の「孫次郎」・・これ以外に何が有るなんて、啖呵をきっても仕様がないが・・・

瘋癲老人としては、写しの方が好きだが、本面がモノクロームなので、カラーを見せられるとコロッと変わるかもしれない。 そもそも比較なんて無理。
最後に、名称の由来。 製作中に脂が思わぬことに鼻の付け根に出てしまった。でも、余りの名作ゆえにこれが本面になった。 怪我の功名か。 正に、<>様様であろう。
では本日はPCも穏やかにしているので、今の内にお終いとしたい。




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